施工の工程

施工の工程

準備

解体

納屋の施工に取り掛かる前に、まず納屋の解体を行った。土壁の土や躯体の木材は今後の改修で再利用するため、土は土嚢袋に、木材はそれぞれナンバリングをしてブルーシートに包んで保管した。躯体だけの状態にした後、様々な方法(コンベックス、レーザー距離計、フォトグラメトリ、3D スキャン)で納屋を実測した。

解体前
解体後
土壁を解体する様子
土壁を解体する様子
2024-06-20_175356
フォトグラメトリによる3Dモデリング
資材調達・運搬・整理
製材所の未利用材
島内の港で軽トラに積み直す
資材運搬
資材運搬
資材整理
資材整理

構造補強

土壁を解体してスケルトンにした後、躯体の損傷度合いを確認し、特に傷んでいた柱2 箇所を取り換え、5 箇所に柱を新設した。長手方向の構造補強は端から3 スパンずつ12 枚、短手方向は西側の眺望のために東に寄せて10 枚計画し、間仕切りと構造補強を兼ねた構成とした。全ての材料は製材所で発生する未利用材を活用して行った。

構造計算

どの角度で材を組めば効率的に耐力を向上させることができるかについて検討した。柱と梁に囲まれた基本フレームを決定し、補強材をθ =0°(補強材が梁に水平)、30°、45°、60°の角度で接合した場合と補強材の本数を半分にした合(θ =X° _half)の計9 通りを比較対象とし、節点荷重をmidas iGen を用いて静的増分解析した。木造の安全限界である変形角1/30 における荷重を比較すると、θ=60° _half が最も材あたりの耐力が高いことが分かった。一方、入手可能な未利用材の材長に限りがあるため、θ=55° _half とした。各フレームの頂点に接する2 本の補強材が主に耐力を負担するため130mm 幅とし、それら2 本の補強材の間を等分するように90mm 幅と105mm 幅の補強材を配置することで規則的な意匠とした。

構造補強
構造補強
南側から見た様子
構造補強を打ち付ける様子

断熱部屋

東側の3スパンは、高気密・高断熱性能を確保した空間(以下「断熱部屋」)として改修した。島内には断熱性能の低い既存建築が多く、島民はこれまで厳しい冬の寒さをしのぐため、暖房等で過剰なエネルギーを消費していた。こうした背景から断熱部屋の改修には、島周辺で容易に調達可能な「土に還る自然素材」や「島内の廃棄物」を用い、素人でも現地で簡単に製作できる断熱材の開発を目指した。この取り組みは島内における高断熱・高気密改修のモデルケースとなることを意図しており、島民が同様の手法で各住居に断熱を施すことを可能にし、廃棄物の有効活用やエネルギー消費量の削減にも貢献することが期待される。

三和土気密

断熱部屋の4周の土台と地面との隙間を塞ぐことで耐久性・気密性を確保した。一般的にはコンクリートを用いることが多いが、離島であることから三和土を用いた。神社等で用いられる亀腹を参照し、三和土で埋めることで素人でも施行しやすい方法とした。土台まで三和土を積層するための型枠を作成し、島内で回収させて頂いた壁土、消石灰、にがり、水を配合した三和土を流し込み押し固めた。1、2ヶ月間三和土を乾燥させた後、表面に漆喰を塗布することで長期的な耐久性を確保した。

三和土気密
漆喰施工前
三和土の流し込み
籾殻燻炭断熱

高松市のカントリーエレベーターにて無料で配布されている籾殻を断熱材として活用した。籾殻を燻炭化することで、断熱性向上に加えて、防腐効果、防虫効果、防湿効果を付与し、断熱材として床下に流し込み、充填した。

床下籾殻燻炭断熱
作成した籾殻燻炭
籾殻を燻炭化する様子
布団断熱

島内で回収した廃布団を解体し、ホウ酸処理を施して防虫効果を高めた上で、断熱材として再利用した。重力による偏りや底つきを防ぐために、ビニール袋に均一に充填し、交換可能なパッケージとして整えた。充填量については、23年度に同研究室の田中が研究を行い、その成果としてまとめた修士論文「離島における空き家改修に向けた自主製作可能な環境配慮型断熱材に関する実践的研究」を基に、十分な断熱性能を確保できるよう決定した。これらのパッケージを収納する棚は、高松市内の材木屋で頂いた未利用材を活用して製作した。

布団断熱
布団断熱
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島民から廃布団をテーラーで改修する
木ずりで押さえている様子
重さを計り、解体した布団をパッキングする様子
重さを計り、解体した布団をパッキングする様子
帆布仕上げ

既存の躯体が大きく歪んでいることから、歪みや施工誤差に対応するために布を用いた内装仕上げとした。打ち付けはフィニッシュネイルで行い、布が重なる部分はアイロンを用いて折り目をつけてから施工することで仕上がりの精度を確保した。施工誤差を許容する計画にしたことで、素人でもスムーズに施工することができた。

帆布仕上げ
帆布仕上げ
断熱部屋を東側から見る
断熱部屋を東側から見る
帆布を織り込んで固定する
帆布を織り込んで固定する
帆布を打ち付ける様子
帆布を打ち付ける様子

キッチン

中央の 4 スパンは、キッチン兼玄関兼作業部屋とした。屋内と庭を繋ぐフレキシブルな空間となる予定である。

籾殻消石灰断熱麻布仕上げ

高松市のカントリーエレベーターにて無料で配布されている籾殻を断熱材として活用した。籾殻を燻炭化することで、断熱性向上に加えて、防腐効果、防虫効果、防湿効果を付与し、断熱材として床下に流し込み、充填した。

籾殻消石灰断熱麻布仕上げ_
作成した籾殻消石灰を壁に流し込む
作成した籾殻消石灰を壁に流し込む
籾殻消石灰を作成する
籾殻消石灰を作成する

休憩室

納屋における西側の3スパンを浴室とオンドル休憩室に改修予定である。男木島では浄化槽などの設置のハードルが高く、水回りが整備されていない家が多い。またガス給湯器を設置する場合は、島外からプロパンガスのボンベを運搬する必要がある。そこで島外のインフラへの依存を減らすためにも、島内資源や改修時に出る廃材・端材を燃料とする薪ボイラーを導入する。島民が実施できるような簡易な防水の工法を検討し、学生自ら施工する予定である。

冬の厳しい寒さに暖をとれるようにするため、薪ボイラーで発生する煙の熱をカスケード利用し、床下に煙を流すことで床を温める韓国古来の床暖房設備「オンドル」を導入した休憩室を計画している。

オンドル実験

施行に向けて床面から室内へ煙が漏れないように床下にダクトを通して二重構造とする実験を行った。現段階では床を温めることはできたが、快適な温度への調整が不十分なため、床材の再検討など引き続き研究と実験を行い、今年度中に施工予定である。

オンドル実験場
オンドル実験場
オンドル組み立て
オンドル組み立て
パイプの加工
パイプの加工

外装

南側の外装は屋外から壁内の構造補強や断熱材を見せるために透過性の高いポリカーボネートとした。それ以外の外壁は材木屋さんからいただいた完全に焼くことができなかったものや節が入ったもの等、商品としては扱うことができない焼杉を使用した。

焼杉

高松市の製材所から頂いた焼杉を外装材として使用した。焼き残しや節などで未利用になった焼杉を活用している。

焼杉
外壁
焼杉外装の構成
焼杉外装の構成
焼杉を打ち付ける
焼杉を打ち付ける
大学出の水切り施工
大学での水切り施工
ポリカーボネート

壁内の構造補強、布団断熱等の構成を見せるために高松市のホームセンターで手に入る透明なポリカーボネイトで外装を仕上げた。

外装全体
外装全体
断熱部屋外装南側正面
断熱部屋外装南側正面
ポリか波板を打ち付ける様子
ポリカ波板を打ち付ける様子
ポリか波板の際の処理の様子
ポリカ波板の際の処理の様子