男木島について
男木島は瀬戸内海に位置する人口約150人の小さな離島である。かつては少子高齢化による人口減少が深刻な課題とされていたが、昨今の瀬戸内国際芸術祭の開催や働き方の多様化を背景に、若い移住者が増加している。またそれに伴い、閉鎖されていた小中学校の再開や民営図書館の開館、新たな店舗の開店など、教育・文化・テクノロジーを受け入れ、成長するアカデミックな島を目指して現在も様々な活動がなされている。
男木島が抱える課題
移住者が急増する一方で、現在男木島は快適に暮らすことができる住戸の不足や、従来から住む島民と移住者の間でのコミュニティ形成の難しさなど、ハード・ソフトの両面で多くの課題を抱えている。 加えて、かつて島内コミュニティの中心的役割を担っていた島内唯一の寺である「道場」は、オーナーの高齢化や檀家の減少によりその機能が失われ、維持管理も困難な状況である。
さらに、電気や水道、ガスといったインフラは高松市に依存しており、下水道の整備も未だに進んでいない。島外からの資材運搬は船で行う必要があり、環境面・経済面での負荷が大きい。ゴミ処理施設も島内には存在せず、廃棄物もすべて船で島外へ搬出されている。また、密集した民家や斜面地の中には細い道や坂が多く、トラックや重機が通行できない箇所も多い。そのため、建物の建設や解体には物理的制約が大きく、工法の選定にも工夫が求められる。
こうした離島特有の課題に対し、島内では住環境の改善を目指して住民自らが住宅の改修や維持管理に関わる例も多く見られる。しかし、改修に際しては限られた資源と道具の中で作業を進める必要があり、建築の専門知識を持たない住民にとっては非常に高いハードルとなっている。