Research

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利便性と地理的特徴

 岡上は神奈川県川崎市の北部に位置し、都心部から電車で約30分とアクセスが良い。岡上は飛び地で、南側を横浜市、三方を町田市に囲まれている。北部には東京湾に注ぐ全長42.5kmの一級河川、鶴見川が流れてる。

飛地になった背景

「飛び地」とは、国や都道府県、市町村などの行政区域の一部が、ほかの行政区によって隔てられている場所のことである。岡上が飛び地になった理由は、周辺地域との関係が影響している。元々岡上村は禅寺丸柿を特産品とし、柿生村との関係が強かった。1938年、都筑郡の5つの村々は横浜市に、その他の5つの村は川崎市に合併された。岡上村はこの合併で横浜市か川崎市のどちらかと合併を迫られ、柿生村との縁を重視し、川崎市と合併を選択することとなった。

農村的風景

岡上は1970年代から1980年代に宅地化が進んだが、大部分が市街化調整区域と農業振興地域に指定されているため、現在でも農村的風景が残る。面積145haの広さのうち、約半分が農業振興地域、さらにその半分を岡上営農団地が占めている。

かわさきそだちワイン特区

2020年、川崎市の一部地域(宮前区、多摩区、麻生区)は「かわさきそだちワイン特区」に認定され、ワインなど果実酒を作るハードルが低くなった。ワインの製造等が進むことで、農家自家製のワインの提供や、市内産ワインのイベント開催が可能となり、商業や観光への波及効果、さらには農業経営の多角化が期待される。岡上には「かわさきそだちワイン特区」を利用している唯一の蔵邸ワイナリーがあり、ワインに関連した四季折々のイベントが定期的に開催され、市内外の人々がワインを気軽に楽しむことができる。

四つの谷
住宅地開発の前後

開発前(1909)

 岡上の地形は川井田谷、自性寺谷、池ノ谷、新田谷の4つの大きな谷戸から形成されている。4つの谷戸は全て奥まで水田として耕作され、細かく地割されていた。

開発後(2023)

 小塚谷・自性寺谷・池ノ谷は地形に沿った住宅の建ち方が今でも見られるが、新田谷は、地形に関係なく住宅が建っている。このことから新田谷は大規模な地形の開発がされたことが読み取れる。

自性寺谷・池ノ谷 | 今も残る昔ながらの農地

岡上は「日本で1番急」と言われる坂があるほど、勾配が激しい地形である。岡上は東京都八王子市から横浜市円海山北麓まで連なる巨大な多摩丘陵の一部であり、現在はまとまった緑地の連坦は少ないため、岡上の地形は貴重であるといえる。自性寺谷と池ノ谷は岡上の畑地や谷戸の田畑や雑木林、竹林などの里山の原風景が今も残る。自性寺谷は、雑木林や田畑などに囲まれた生産地としての役割がある。池ノ谷は、畑と住宅地に囲まれ、市民農園が多いといった特徴がある。

川井田谷・新田谷 | 住宅地開発の違い

岡上の4つの谷戸のうち、1970年代から1980年代に川井田谷と新田谷は宅地化が進んだ。それぞれの開発のされ方は異なり、川井田谷は地形を活かした開発がされ、新田谷は盛土で平地に開発された。これには、行政の管轄が影響しているとされ、川井田谷を管轄した川崎市は当時岡上の開発に額を費やさなかったために大規模な開発ができず、本来の地形が残ったと言われている。